福寿堂秀信 オンラインショップ TOP  >  コラム 和菓子な毎日  >  お月見の話

2018.09.12

お月見の話

 

〈花鳥風月の楽しみ〉


昔ながらの日本家屋には「縁側」があり、屋内とも屋外ともつかないその空間は、四季の変化を楽しむのにはもってこいの場所でした。
花を愛で鳥を呼び風をうけて月に親しむ・・・特別なことではなく、日々の明け暮れの中にそのような営みがあったのでしょう。
そして秋のお月見こそは、縁側に最もふさわしい行事ではないでしょうか。
静かに坐して皓皓と照る満月を見上げ、・・・ただ見上げてそして何もしない。さやかな秋の夜気、月光をうけて畳にうつる自分の影、モノトーンの静寂に包まれた清浄な気配こそが十五夜の真骨頂です。

〈江戸のお月見〉


江戸時代の月見の風俗を見てみましょう。『江戸府内絵本風俗往来』によると、十四日の夜から宴をひらいて連歌や連句を楽しんでいた様子がうかがえます。
また『塵塚談』には、月見は本来「人の賀するにも祝するにもあらず。貴賤とも遊興の楽しみなり」とあります。
お月見こそは、酒宴をはるばかりが能ではない、万人平等の様々な楽しみがあったわけですが、やがて「ほしゐままに宴飲するを飾とせり」となって、「恐れ多き事」と述べられています。
陰暦八月十五日、江戸の町は多くの八幡宮の祭礼で、神楽太鼓があちこちで響き幟も上がって、とても賑やかだったようです。


〈月見のお団子〉


『江戸府内絵本風俗往来』には、十五夜の未明から家族全員うちそろって月見団子を作ることが吉祥だと書かれています。
月に供えるだけではなく、家族一人一人に十五個ずつを柿や栗などとともに配ったといいますから、人数の多い家はたいへんで、お手伝いもたくさんやってきて、 台所は大騒動だったそうです。そしてこのような騒動を、相変わらず毎年繰り返して家族の年中行事をするところに大江戸繁盛の自負がうかがえます。
関東では丸いお団子が多いようですが、関西では小芋に似せた形が多く、外側に餡をつけています。
衣かつぎ(皮のまま茹でた小芋)をあらわしていたり、あるいは月に叢雲とも言われます。


〈月の魅力〉


日本古来の十三夜の月見、中国から伝わった十五夜の月見。なぜ日本では中途半端に欠けた十三夜の月を愛でたのでしょうか。
完全なものより少しずれたものを愛する心は、『徒然草』137段に「月はくまなきをのみ見るものかは」とあるように、日本独特の美意識かもしれません。
夜ごと姿を変える月は空想を刺激しファンタジーの源泉となり、日本では「竹取物語」が生まれました。
かぐや姫は陰暦八月十五日、白々と照る満月に向かって空を上ったのです。
いまや人の足跡がついてしまった月ではありますが、李白にならって、静かに酒杯をあげようではありませんか。