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2018.08.26

重陽の節句

「六日の菖蒲」に「十日の菊」というと、時期遅れで役に立たないことのたとえとされます。
菖蒲は5月5日の端午の節句に飾るもの、そして菊は9月9日の重陽の節句にこそ活躍する花なのです。


9月9日を「重陽」というのは、陽数-つまり陰陽説でいうところの陽にあたる数字としての奇数-その中で最も大きい「9」が重なることを意味しています。
そもそもこの陽数が月日で重なる日はいずれもおめでたい特別の日とされ、厄払いを行なうのが古代中国からの習わしでありました。
また陽数は二つに割れないめでたい数として、祝い事一般には何かにつけ陽数を重んじるようになったのです。

重陽の節句は菊の節句ともいい、菊にちなんだ行事が様々にとり行なわれます。
菊には、その芳香と気品の高さゆえ邪気を祓う力があり寿命を延ばす延寿の功があると信じられてきました。
陰暦9月9日頃はちょうど菊の盛り。咲き香る菊を重陽というめでたい日に格別に愛でるようになったのも納得できることです。
伝説では、中国南陽郡(河南省)には山中に大菊があり、その滋液がしみいった水を飲むものは長寿を保つといわれます。
この説話は日本で能や歌舞伎に取り入れられ「菊慈童」として知られるようになりました。周代の王に仕えていた童が罪により南陽郡に流されたおりに菊の露を飲み、不老不死の仙人になるというお話です。

菊は奈良時代に中国から伝わりましたが、当時は観賞というより薬草として栽培されていたということです。


菊酒というものがあります。酒に菊花をひたして飲むものですが、この風習は平安時代から宮廷行事として行なわれていたようです。
また「菊のきせ綿」という習わしは、重陽の前夜に菊に綿をかぶせそこにたまった夜露と芳香をもって翌朝体を拭くというもので、これによって長寿が保てるとされてきました。
これらはいずれも中国より伝わりましたが、江戸時代になって「重陽の節句」が五節句の一つとして幕府によって定められ、民間でも行なわれるようになりました。


菊はつぼみから枯れた後まで大切にされる花です。
そしてこのように一つの花を愛して美しい習わしを伝えてきた人の心もまた美しいものと思えるのです。



※上の画像は重陽の節句限定の上生菓子「菊寿」