職人の技が息づく涼菓──水羊羹・抹茶水羊羹
夏も本格的な暑さを迎える頃、和菓子屋の店頭には水羊羹が主役のように並び、涼やかな佇まいで私たちを誘います。
もともとは、釜の底に残った餡を薄めて寒天で固め、職人たちが内輪で楽しんでいた“まかない菓子”だったともいわれる水羊羹。いつしかその素朴な味わいが人々に親しまれ、夏の和菓子を代表する存在へと育っていきました(地域によっては冬に食べる文化も残っています)。
寒天がしっかり効いたやや固めの水羊羹が和菓子屋の定番でしたが、時代が移るにつれ、さまざまな食感が求められるようになりました。
福壽堂秀信では、よりなめらかに、よりあっさりと、お作りするようになりました。
冷水にさらして作る小豆こし餡の水羊羹は、噛むほどもなく、舌の上でほろほろとほどけ、のどへ流れてゆきます。
こうした水羊羹の味わいもまた、いいものです。
風味を引き出す──「生餡」からの丁寧な仕事
羊羹づくりは、小豆をていねいに炊き上げるところから始まります。豆の風味をそこなわないよう、必要以上に煮崩さず、ふっくらとした状態で火を止めます。
その後、熱いうちに皮を取り除き、「生餡」と呼ばれる状態に。水分と糖のバランス、火加減ひとつで、口あたりの滑らかさが決まります。
水羊羹はあっさりとした味わいのものが多い中、私たちは“本当に美味しい小豆の風味”を伝える一品を目指しました。
北海道十勝産の小豆を使用し、丁寧に炊いた自家製餡を活かした独自の製法。口に含んだ瞬間、豊かな小豆の香りと旨みが広がり、その後、すっと消えるような滑らかな口どけが訪れます。
この感動を、ぜひ一度ご体験ください。
水羊羹の製造工程

① もとになる生餡
加熱前の状態で、水分をしぼった状態の餡。福壽堂秀信ではここから炊き始めます。

② 寒天・砂糖を加えて炊く
生餡に寒天・砂糖などを加えながら、均一になるように丁寧に撹拌していきます。

③ 炊き上げ
じっくりと炊き上げて、餡にしっかり火を通し、なめらかな口当たりになるよう仕上げます。

④ 漉しながら充填
滑らかさを保つために漉しながら充填器に流し込み、型に注入していきます。

⑤ 充填完了
一つ一つのカップに丁寧に充填された水羊羹は、この後包装され、出荷されます。
もうひとつの人気商品「抹茶水羊羹」は、西尾の抹茶を使用した香り豊かな逸品。渋みと旨みが調和し、なめらかな餡と見事に溶け合います。 深みのある鮮やかな色合いからも伝わる、抹茶の濃さ。上品ながらも芳醇な香りと、濃厚なコクと旨味を持つ西尾抹茶を、希少な北海道産・大手亡豆とあわせて、自家製でていねいに仕上げました。 濃厚でありながらのどごしがよく、すっと溶けるようななめらかな口どけを、ぜひご堪能ください。 素材と手間にこだわった福壽堂秀信の夏の代表菓。水羊羹と抹茶水羊羹、それぞれの魅力をぜひ味わってみてください。
香り際立つ「抹茶水羊羹」
おわりに