盆菓子「落雁(押物)」──召し上がってこそ本物です
「落雁って、お砂糖のかたまり?」
そう思っている方も多いのではないでしょうか。
子どもの頃、八幡さんでもらった「押しもん」は、なんだか味が薄くてパサパサしていて…。でも、それとはまったく違うのが、福壽堂秀信の落雁です。
これはまさに、目にも涼やかな、そして口にして驚く、職人仕立ての芸術品。
落雁(押物)とは
福壽堂秀信では、毎年お盆の時期だけ作る特別な和菓子、「落雁(らくがん)」がございます。
生産工場には、木型で落雁を打ち出す「カンカン」という音が、朝から晩まで響き渡ります。
一般にお盆のお供え物として扱われがちな落雁ですが、当店では「召し上がってこそ、本物」と考えています。
お供えの後に、あるいはその前に、ぜひ一口お召し上がりください。
絶妙の「しとり(湿り気)」
上質な落雁は、カリンと固く割れるものではありません。
福壽堂秀信の落雁は、和三盆糖に寒梅粉や水飴を加え、絶妙な「しとり(湿り気)」を持たせています。
この生地作りが、本物なのです。
中に入っているのは「ねき餡」
さらに驚かれるのが、その中身。
実は、福壽堂秀信の落雁には、自家製の「ねき餡」が入っているのです。
「ねき餡」とは、水飴をたっぷり使った落雁専用の餡。水分をやや抑えて炊き上げ、落雁の生地に水気が移らないように工夫されています。
しっとりとしていながら、べたつかず。餡が生地となめらかに溶け合う瞬間は、ほかの和菓子ではなかなか味わえない魅力です。

ねき餡
落雁(押物)の生地
色付けと糖質の水分で湿らせて調整した砂糖を
落雁粉、寒梅粉、和三盆糖、でん粉と合わせます。
木型に打つための生地の合わせとして、まとまり具合は硬すぎないように、また崩れないように職人が生地を握った感覚で、生地の水分を調整して絶妙の「しとり(湿り気)」をもたせています。
最後に生地にフシ(かたまり)の無いように、とおしで生地をこします。
これを、各色ごとに手作りしております。
見た目にも涼やかで、色と形に心がときめく──
そして一口いただけば、ふんわりとほどけて餡と混ざり合うやさしい甘さ。
お盆の飾り物としてだけでなく、「召し上がってこそ落雁」。
そんな想いを込めて、今日も職人たちが木型に生地を打ち込んでいます。
落雁(押物)の型打ち工程

① 木型に生地をふわっと入れ、
でも型がきちんと出るように力加減をしながら、隅々まで生地を押して固めます。

② 中餡となる「ねき餡」を入れる
丁寧に中央に配置します。

③ さらに生地をのせる
餡を包むように上から重ねます。

④ 平型(平らな板)で押して固める
均等な力でしっかりと押し固めます。

⑤ 型から外す
木型から角など崩れないように外し取り出します(表面はまだはまっています)

⑥ 安定させるために一晩寝かせて、
翌日に個別包装します。