福壽堂秀信

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秋のはじまりに寄せて──栗こもちのこと

投稿日:2025年8月下旬|カテゴリ:季節のお菓子

8月の終わり。
まだ汗ばむ陽気が続く中にも、ほんのわずかな風の変化や、夕暮れの色に、秋の足音を感じるようになりました。
百貨店の店頭を彩る菓子や果実にも、季節のうつろいはそっと映り込みます。
なかでも栗の姿に出会うと、「ああ、今年もまた秋がやってくるのだな」と、ふと足を止めてしまうのです。

福壽堂秀信では、そんな季節の移り変わりを、そっとお菓子に映しとるような気持ちで、日々の菓子づくりに向き合っています。
「栗こもち」は、秋の入り口にだけそっと登場する、生まれたてのようにやわらかな一品。
やさしい甘さの粒餡と、ほっくりとした刻み栗を、薄くしなやかな求肥でひとつに包みました。

ひと口含めば、ふわりとほどけるお餅の中から、小豆のやさしい風味と栗のほのかな甘さが広がり、まるで口の中にやわらかな秋が訪れたかのよう。
気づけば気持ちまで、ふっとやわらいでいるのです。

栗こもちの写真

和菓子職人にとって、粒餡は最も難しい素材のひとつ。
小豆そのものの風味を生かしながら、やわらかく、それでいて崩れすぎず、甘さが主張しすぎないように──
煮る時間も火加減も、水分量も、まさに職人の感覚が問われます。

丁寧に炊きあげられた粒餡に、やさしく煮含めた栗を添えて。
季節のめぐりをそっと包み込んだ「栗こもち」は、秋を待つ心にそっと寄り添う和菓子です。

粒餡の写真

和菓子を通して季節を感じる──
それは、日本の暮らしが大切にしてきた美しさのひとつかもしれません。
旬をいち早く映す和菓子には、ほんの少し先の季節をそっと先取りする楽しみがあり、それがまた日々のなかに小さなときめきを運んでくれるのです。

栗こもちの写真

あるお客様が、栗こもちを手に取られながら「もう栗のシーズンなんですね。栗を見ると、もう秋はすぐそこなんだなと感じます」と話してくださいました。
また、別のお客様は「栗が好きで、年中何かしら栗のお菓子を探し歩いています」と微笑まれたこともあります。

小さなひとくちのなかに、誰かの記憶や想いがやわらかく重なる──
和菓子がそんな存在であれたらと、私たちは願っています。

店頭では、こんなお声かけをさせていただくことがあります。
「ひと口頬張ると、ホッとどこか優しさを感じる、栗と粒あんが絶妙な甘さの生菓子ですよ」
「角切りの刻み栗の食感がアクセントになって、美味しいんです」
「お餅が薄皮の求肥生地なので、口の中でとろける柔らかさで、つい何個でも食べられます」

栗のお菓子と季節の和菓子文化

日本の和菓子文化において、「栗」は秋を象徴する代表的な素材です。
栗羊羹、栗蒸しようかん、栗きんとん、そして「栗こもち」など、栗を使った生菓子は、毎年秋を待ちわびる方々に親しまれています。

季節を映す和菓子は、見た目の美しさや味わいだけでなく、日本人の自然観や行事とのつながりを感じさせてくれるもの。
「和菓子で季節を感じる」──そんな丁寧な暮らしの一場面として、栗のお菓子は今日も多くの人々に寄り添っています。

ご案内

  • 栗こもちの販売期間:〜10月20日(月)
  • 価格:税込270円(本体価格250円)
  • 日持ち:当日中
  • ※月見団子の販売中は販売休止となります。

季節はゆっくりと、でも確かに歩みを進めています。
ほんの小さな変化に心をとめること──それは、私たちの暮らしを、少しだけやさしくしてくれるのかもしれません。

秋の入口にそっと登場する「栗こもち」もまた、そんな季節のしるしのひとつです。
お召し上がりいただく方の心に、やさしい余韻を残せたなら、それが私たちにとって何よりの喜びです。

この秋が、皆さまにとって、実り豊かな季節となりますように──。

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